Ghost Sweeper 3








真っ暗な蔵の中で地神と二人切り。

―――――そんなのちっともロマンチックじゃなぁぁああいっ!!!

イヅルは引き倒された床の上で、真っ暗な闇の中に淡く光る地神の紅い瞳に怯えていた。

「や……ぃ、いや、辞めて下さぃ」

シャツを掴んで涙目で訴えると、地神はにっこりと笑って「だぁめ」と言った。

「ひぃぃぃ、何でですか?貴方神様なんでしょう?神様がこんな、ご、強姦まがいなことっ!」

イヅルは必死で逃れる方法はないかと頭をフル回転させる。

地神は「神様言う名前ないよ。ギンや。市丸ギン。呼んでみ?」とイヅルのズボンのジッパーを下げた。

「い、市丸さん!?……い、市丸さんっ!!辞めて下さいっ!!!」

抵抗の腕が下がると、市丸の手はシャツに掛かる。

ボタンをするすると解かれて、慌ててシャツを掴んだイヅルは結局ズボンも下着毎剥ぎ取られてしまった。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってぇ!!!」

イヅルは手で下肢を隠しながら、赤い顔で静止を呼びかける。

「んー待たれへんなぁ」

市丸は笑いながらイヅルの肌に舌を這わせた。

「ひぃぃん……やぁ……やめて下さ」

それから逃れようとイヅルは身を丸めて転がろうとする。

「大体神様が……っ、どうして人間の身体に普通に触れるんですかっ!!!」

喚いたイヅルに、市丸は「市丸さん」と訂正を入れると、「そんなんボクが一級神やからに決まっとるやろ」と笑った。

「い、一級神!?い、一級神なんですか市丸さん!?」

イヅルは驚きの声を上げ、自分の胸に舌を這わせる市丸の顔を見つめる。

「そうやで。やから喜び。君、ボクのお気に入りにしたげるよ」

いやらしい赤い舌をチロチロと蠢かしながら、笑う市丸はちっともそれらしくは見えない。

イヅルは泣きながら「結構ですっ!!」と叫んだが、「供物に拒否権はないよ」と市丸はイヅルの足を抱え上げた。

「ちゃんと清めてあげような」

恥ずかしいところが市丸の目の前で、イヅルは慌てて身を捩ったが逃れられない。

そんなところで喋らないで欲しい。

イヅルは目に涙が溢れるのを感じて、修兵を恨んだ。

「っ……ひ、いゃぁぁあああっ!!!」

突然身体の奥まったところに濡れた感触を覚える。

それが舌であることを理解したイヅルは、激しく身悶えて嫌を繰り返した。

「あかんよ。ボクのを入れるんやから、ちゃんと清めておかな」

市丸はがっちりと掴んだ足を離さず、それどころかむずついてきた窄まりに舌を埋め始める。

「いやぁ、いや、……やだぁ……そんなとこっ」

イヅルは段々息も絶え絶えになって、動きも緩慢になっていくが、震える唇から零れる声は止まらない。

「いやぁ、……離し……て、んくっ」

それでも市丸の愛撫は止むことなく、イツルが啜り泣き出すまで続けられた。

「どない?もう離しては言わんの?」

イヅルの抗議の声が納まり、代わりに甘く震える喘ぎ声に変わったのを聞き取った市丸は、意地悪く訊ねる。

「も……んん、……やぁ」

すっかり勃ち上がって蜜を零し、震えているイヅル自身に息を吹きかけると。

「あああ……っ」

それだけで感じ入った声が漏れるようになった。

「ふふふ。気持ち良ぅなってきたね」

市丸の指が窄まりに落ちる。

「ああっ……んやぁ」

まだキツイ蕾ではあったが、長い舌の愛撫で随分と解れている。

市丸は焦らずそこに指を出したり入れたりしながら、イヅルの勃ち上がったものを掴んだ。

「ボクにイかせて貰えるなんて、幸運な子ぉやなぁ」

涙に濡れた青い双眸が開かれ、物言いたげに睨み付ける。

けれど口は指の愛撫がきついのか、唇を噛んで結ばれていた。

「ちゃんと啼き。そない睨まんでもちゃあんと気持ち良うしたるから」

そう言ってイヅルの中の一点を擦り上げる。

「ひぃっ……ぅ、ああああっ」

まるでスパークのような快感に、イヅルは思わず仰け反る。

「や、や、だめぇぇぇえ」

そこばり攻められて、あっと言う間に射精感が込み上げた。

しかし後一歩と言うところで指が抜かれる。

「んんっ、やぁん……っ」

思わず腰をずらして指を抜かすまいと追ってしまったイヅルは、自分の無意識の行動に羞恥する。

頬を染め、眉を寄せて涙目になったイヅルに、市丸は満足そうに口角を上げた。

「まぁだイかせへんよ。ボクの入れてイき」

「はぁ……あんん……やだぁ」

腰を掴まれ、足を割り広げられたイヅルは、最後の抵抗に身を捩る。

それを抑えつけ、市丸は着物の裾を割って熱く滾る自身をイヅルに押し当てた。

「昇天するほど良い思いさしたるよ」

ぐっと熱いものが押し込まれる。

「ひっ」

息を呑んだイヅルは、次の瞬間奥へと入り込んだそれに悲鳴を上げた。

「あぁぁぁあああっ!!!!」

それは痛みとは違う感覚だった。

何かが体の中で蠢いている感触。

それはイヅルの良く知る自分と同じ性器ではなく、例えて言うなら小動物。

鼠か蛇か、異様に太くて長い物が腹の奥まで潜り込んでくる。

「いやぁああああっ!!!」

瞳孔の開いたイヅルは、身体中ドクドクと、全身が心臓になったかのように震える。

市丸の顔がイヅルを覗き込んだ。

「痛くはないやろう?」

痛くはない。

確かに痛くはないのだが、この言いようのないおぞましい感触はその何倍もの不快をイヅルに叩き付ける。

「ひぃぃぃ……いやだぁぁぁあっ!!!」

うねうねと、体の中を何か長い物が蠢いている。

意志を持つ何か。

それがイヅルの先程探り当てられた、弱いところを擦り上げる。

―――――っ!!!」

それは得も言われぬ快感だった。

あっと言う間に絶頂へと導かれたイヅルは、市丸の腕の中で身体を跳ねさせる。

しかしそれは一度では終わらず、何度も何度もそこばかりを擦られ、否応なしに身体はすぐにと駆り立てられた。

「ひぃっ……っ……っぅ
―――――っ!!!」

二度目の絶頂は精液を伴わない。

間に合わないほどの快感の波に、身も世もなく攫われる。

言葉も何も追いつかない。

ただ駆り立てられて、駆り立てられて、何度も何度も達して。

眩暈と意識の混濁に、身体が浮いているように気さえする。

浮遊感に全てを投げ出したイヅルは、そのままぱったりと市丸の腕の中で意識を失った。







**********







気付いたのは事務所の修兵のベットの中だった。

イヅルは異様に怠い身体に最初、金縛りにでも遭っているのかと怯えたくらい。

身体中、何処も痛いところはなかったが、すぐに記憶は戻ってきた。

人ではない者と交わった感触に、イヅルは思い出しても身震いする。

おぞましいと感じたあの感触に、最後は呑み込まれるように快感の波が押し寄せた。

寝返りを打って、ベットサイドの時計を見ようとしたイヅルは、部屋の入口に凭れ掛かる人影に動きを止める。

「おはようさん」

銀色の髪、赤い瞳、狐顔の人ならざる霊圧。

―――――地神。

しかし地神、市丸はあの蔵で出会った時のような着物は着ておらず、代わりに黒いスーツに身を包み、一見どこかの高級ホストのような風情になっている。

「それ……どうしたんですか?」

嗄れた自分の声に驚きながら訊ねると、市丸は「似合う?」と胸を張った。

「イヅル、あれから三日も寝とるから、ボクちょっと仕事片して、スーツ作ったんよ」

「え……」

―――――三日ぁ!?

イヅルは驚きすぎて声が出なかったのを良いことに、市丸はイヅルに近付くとふれだけのキスをして笑う。

「これからはずぅっとイヅルと一緒やで。よろしくな」

頬を撫でる指に、これは現実なのだとイヅルは青褪める。

人外の恋人なんて、有り得ない。

いや、そもそも恋人というか、自分は供物と、生け贄と言われていた訳で。

「ひ、ひ、ひさぎさぁぁぁぁぁああああんっ!!!!」

イヅルは怒声を上げて階下にいるんだろう修兵に怒りを叫んだ。

「ばかぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!!!!!!!」

市丸は耳を押さえて笑っていたが、階下の修兵はテレビのボリュームを上げただけ。

隣に座っていた恋次は内心イヅルに同情していたが、市丸に敵わないのは経験済みなので黙っている。

「うわぁああああああああああん」

盛大に泣いたイヅルは、仕方なしに市丸の胸で涙を拭った。

檜佐木除霊事務所は今日も平和である。


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